体バランス、運動連鎖(キネティックチェーン)とは? 肩こり・腰痛の関係
目次
整体や鍼灸で窺える運動連鎖(キネティックチェーン)
東広島鍼灸整骨院で実際に鍼灸や整体をしていて感じるのは、
「肩が痛いから肩だけ」「腰が痛いから腰だけ」といった施術では、
なかなか痛みが改善されにくいケースがあります。
もちろん、痛みが出ているところに施術を行うことは重要です。
また、
痛みのある箇所や反応点に局所的箇所に狙いを定め、
的を絞った施術で症状の改善に繋がる事も臨床上多く体感します。
お一人お一人の痛みの原因は様々ですが、
実際の臨床では、
痛みがある場所に原因があるケースもあれば、
痛みがある場所と、原因となる負担が生じている場所が異なるケースもあることを経験します。
例えば、
腰痛でお越しになられている方でも、
原因となる負担が股関節や胸椎の動きにあることがあります。
また肩こりの方でも、
骨盤や足首の動きも肩こりに影響していることも考えられます。
このような考え方の基礎となるのが、「運動連鎖(キネティックチェーン)」という考え方です。
今回は、鍼灸・整骨院の専門的な視点から、
運動連鎖とはどのような仕組みなのか、なぜ痛みの予防やパフォーマンス向上につながるのかを、
分かりやすく解説していきます。
運動連鎖(キネティックチェーン)とは?
運動連鎖(Kinetic Chain)とは、一つの関節や筋肉が単独で動くのではなく、
身体全体が鎖(チェーン)のようにつながり合い、連動しながら働くという考え方です。
日常生活のほとんどの動作で、複数の関節や筋肉が同時に協調しながら働いています。
運動連鎖の例
たとえば、
床に落ちた物を拾うという単純な動作一つにしても、
様々な筋肉や関節の連動によってなされます。
どのような筋肉や関節が働いているのか見てみましょう。

| ①足底〜足関節の準備動作(立位の安定) |
| 足底筋群が収縮
↓ 足趾が軽く屈曲(地面をつかむ) ↓ 下腿三頭筋が等尺性収縮 ↓ 足関節底屈がわずかに増える(重心を安定) ↓ 前脛骨筋が拮抗して軽く収縮 ↓ 足関節背屈が微調整される |
| ②膝関節の屈曲(しゃがむ準備) |
| 大腿四頭筋が遠心性収縮
↓ 膝関節がゆっくり屈曲 ↓ ハムストリングスが求心性収縮 ↓ 膝屈曲が深まる |
| ③股関節の屈曲(上半身を下げる) |
| 腸腰筋が求心性収縮
↓ 股関節屈曲が進む ↓ 大殿筋が遠心性収縮(ブレーキ) ↓ 体幹が前傾し始める |
| ④体幹の前傾(物に近づく) |
| 脊柱起立筋が遠心性収縮
↓ 体幹前傾が進む ↓ 腹直筋・腹斜筋が求心性収縮(体幹の安定) ↓ 骨盤が前傾方向へ回旋 腹直筋・腹斜筋が求心性収縮(体幹の安定) ↓ 骨盤が前傾方向へ回旋 |
| ⑤肩〜腕の前方リーチ(手を伸ばす) |
| 僧帽筋上部・肩甲挙筋が安定収縮
↓ 肩甲骨が軽度挙上・上方回旋 ↓ 三角筋前部が求心性収縮 ↓ 肩関節屈曲(腕を前に伸ばす) ↓ 前鋸筋が収縮 ↓ 肩甲骨が前方へ滑走(プロトラクション) |
といった具合に、日常のちょっとした動きだけでも、
足の裏の筋肉から、
足関節・膝関節・股関節・骨盤・腰椎・胸椎・肩甲骨・肩関節と、
多くの関節とそれに付随する筋肉が連携して動いています。
歩行のトリプルエクステンション
また歩行の際には、
足首・膝・股関節の3つの関節が同時に伸びる「トリプルエクステンション」と呼ばれる連動した伸展動作が起こり、
この3つの足首・膝・股関節の連動がスムーズであるほど、
下半身にかかる負担が分散され、効率よく歩く事ができると言われます。
なぜ痛みは違う場所に現れることがあるのか
運動連鎖(キネティックチェーン)からくるもの
つまり身体の動きは、どこかの関節だけで行っているというよりも、
関節を挟んだ違う筋肉同士の協調、違う関節同士の連携によってなされており、
「一つのチームの連係」として働いているのです。
もし、体のどこかの関節の動きが悪くなっている場合は、
それを補うように無意識化で調整を行って、他の関節や筋肉が動きをカバーしているのです。
この運動連鎖(キネティックチェーン)の考えに基づくと、
身体は一か所だけではなく、全身が連動して負担を分散しているため、
症状が現れる場所と原因となる部位が一致しない場合がある事が分かると思います。
体の中心から末端へ力が伝わる
さらには、
「力は身体の中心(体幹)から末端(手足の先)へと順序立てて伝わっていく」
という近位から遠位への伝達原則も関わっています。
途中のどこかの関節で力の伝達がうまくいかないと、
その分を他の部位が無理に補おうとする「代償動作」が起こりやすくなるのです。
特にスポーツで
- ✅フォームを意識するとき
- ✅パフォーマンス向上
- ✅ケガの予防
といった点を考える際には、この考えが重要なポイントの一つです。
骨盤は土台、背骨は柱
東広島鍼灸整骨院では、身体を家に例えて考えています。
骨盤は家の基礎(土台)、背骨は柱にあたります。
基礎が傾けば柱にも影響が及び、建物全体のバランスが崩れるように、
骨盤の傾きや回旋は、
その上にある腰椎、胸椎、頸椎へ影響を与えます。
ただし、「骨盤が歪んでいるから痛い」と単純に考えるのではなく、
骨盤を含めた全身の運動連鎖の中で評価することが重要です。
関節ごとに異なる安定性と可動性の役割
さらに専門的に見ると、
身体の関節には、足関節から上に向かって、
大きな動きを担う「可動性(モビリティ)」を重視した関節と、
身体を支え安定させる「安定性(スタビリティ)」を重視した関節が、
交互に並んでいると考えられています。
- 足関節:可動性が求められる関節
- 膝関節:安定性が求められる関節
- 股関節:可動性が求められる関節
- 腰椎:安定性が求められる関節
- 胸椎:可動性が求められる関節
- 肩甲骨・肩関節:安定性と可動性の両方が複雑に求められる部位
この考え方に基づくと、
可動性が求められる股関節や胸椎の動きが硬くなり本来の可動性を発揮できなくなると、
安定性を担うはずの膝関節や腰椎が、代わりに大きく動いてその動きを補おうとしてしまいます。
安定性を担うべき関節が過剰に動かされる状態が続くと、
その関節や周囲の組織に負担が蓄積しやすくなり、
痛みや不調につながりやすくなると考えられています。
お越しになられた腰痛や膝痛の方をみていると、
腰や膝の周りの筋肉が張っているのですが、
お尻や背中、足首まわりの筋肉がかたくなっていることが多く見られます。
胸椎の可動域低下による代償動作
胸椎は可動性が高いのですが、
腰痛や肩こりの方をみていると、
胸椎の可動域が低下していると感じることがあります。
その原因の一つに、
デスクワークやスマートフォンの使用により、
胸椎周囲の筋肉に負担がかかっていることが挙げられます。
また、
胸椎は肋骨とつながっており、身体を回旋させたり胸郭を広げたりする重要な役割を担っています。
胸椎の可動域が低下することで、
肩甲骨の動きが制限されたり、
首や肩、腰が代償動作を行う事で、
肩こりや首の不調、腰痛などにつながることもあります。
足元から始まる運動連鎖
運動連鎖は足から遠く離れた肩の不調に影響していることもあります。
たとえば、扁平足気味で土踏まずのアーチが低下し、足の裏が内側に倒れ込みやすい状態が続くと、
その影響は下から上へと波及していきます。
足元から肩への運動連鎖の一例

足の裏が内側に倒れることで、
その真上にあるすねの骨がわずかに内側にねじれ、
さらにその上の太ももの骨も内側にねじれます。
すると膝がやや内側に入りやすくなり(いわゆる「ニーイン」と呼ばれる状態です)、
その影響で股関節も内側にねじれ、骨盤が斜めに傾いたり回旋したりします。
骨盤が傾くと、
その上に乗っている背骨は、まっすぐ立とうとしてバランスを取り直すために反対方向にねじれる代償が起こりやすくなります。
そして、背骨の上端にある肩甲骨の位置がそれに引っ張られてずれることで、
最終的に肩周囲の筋肉に余計な負担がかかりやすくなる、という流れです。
このようなケースではご本人様に自覚が足にはないことも多く、
なかなかご本人様が気づくことは難しいです。
日常の歩行・足から垣間見える運動連鎖(キネティックチェーン)
私は人が歩いている姿で運動連鎖(キネティックチェーン)の動きを観察しますが、
多くの方が一見、真っすぐに歩いているようで、
よく観察すると、どこかの関節の動きが悪かったり、
それを代用するように歩いたりすることを目の当たりにします。
ご本人様には気づいていないところで歪みがあって、
知らず知らずに代償動作を行っているという様子は、
何気ない歩行ひとつとっても、日常的にうかがうことが出来ます。
もちろんすべての方がこのような代償動作での不調につながっているわけではありません。
身体にはこのような「つながり」が存在しており、
足などの動きの不調から、様々な連動する箇所へと波及した結果、
症状が出ているケースもある、ということです。
ちなみに、
靴底の減り方に左右差がある、内側ばかりすり減るという方は、
歪みにより、代償動作が起きているサインのひとつとして見ることが出来ます。
具体例で見る、運動連鎖の乱れと代償動作での不調
膝の痛みと、足関節・股関節の硬さ
膝は本来「安定性」を担うべき関節です。その上下にある足関節・股関節の可動性が低下していると、
しゃがむ・階段を上るといった動作の中で、
膝が本来以上に大きく動いたりねじれたりして動きを補おうとします。
ランニングや階段昇降で膝の前面・内側に負担を感じやすい方には、
膝そのものだけでなく、
足関節の背屈や股関節の可動域を確認することも大切です。
膝の痛みがある方は、
「足首や股関節にもそういえば痛みが出ることがたまにあるな」とか、
「昔は足首(又は股関節)の方も痛みが出ることがあった」という風に、
なんだかの心当たりがある方もいらっしゃるかもしれません。
腰の痛みと、股関節の動きの制限
股関節の伸展や回旋が硬くなっていると、
しゃがむ・振り向く・体を反らすといった動作の中で、腰椎が代わりに大きく動いて可動域を補おうとします。
慢性的な腰痛がある方は、腰の硬さや張り、腰椎の可動域の低下もありますが、
中には、股関節周囲の柔軟性の低下が原因となっていることも考えられます。
肩こり・肩の痛みと、胸椎の動きの硬さ
胸椎の回旋・伸展の可動性が低下していると、
腕を上げる・投げるといった動作の中で、肩甲骨や肩関節に過剰な負担がかかりやすくなります。
特にデスクワークによる猫背姿勢が続いている方に、肩こりや腕の上がりにくさが出やすいのは、
この胸椎の動きの制限が一つの原因となっているケースが多く見られます。
スポーツにおける運動連鎖
スポーツでは運動連鎖の概念がさらに重要です。
野球の投球は、運動連鎖をイメージしやすいです。

野球の投球動作ではまず、
①足で地面を踏み込み、
②股関節で力を生み、体幹を安定させ、
③骨盤を回旋させ、上半身にエネルギーを伝える
④胸郭(肋骨・みぞおち)が回旋し、肩へ力を伝える
⑤肩甲骨が回転・内転し、肩関節をスムーズに動かす土台をつくる
⑥肩関節の回転でさらに力を加速させる
⑦肘から手首にかけてしなりを生むことで、さらに力が伝わる
⑦指先でボールを押し出し、最大のスピードと回転を生み出す
肩甲骨、肩、肘、手首、指先へと、
まるでムチをしならせるように力が伝わっていくことで、
末端であるボールに大きなスピードが生まれます。
この力の伝達効率が高い、いわゆる「連動性の良いフォーム」を身につけている選手は、
少ない力みで大きな力を生み出すことができ、
特定の関節・筋肉にかかる負担も分散されやすくなります。
逆に、
どこか一か所の動きが悪くなると、
他の部位へ負担が集中し、
繰り返しの負担が蓄積してオーバーユース障害(使いすぎによる障害)のリスクが高まったり、
パフォーマンスの低下につながったりする可能性があります。
これは野球に限らず、
ゴルフ、テニス、バレーボール、ランニングなど、
多くのスポーツ動作で共通する考え方です。
日常生活でも運動連鎖は起こっている
運動連鎖は、
歩く、階段を上る、椅子から立ち上がる、洗濯物を干す、子どもを抱っこする、
このような何気ない動作でも常に働いています。
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用によって姿勢が崩れると、
身体はバランスを保とうとして代償動作を繰り返します。
その積み重ねが、筋肉の緊張や関節への負担につながることがあります。
東広島鍼灸整骨院の整体・鍼灸で運動連鎖を評価する理由

東広島鍼灸整骨院の整体施術では、
股関節や膝、肩といった痛みがある部位だけをみるのではなく、
骨盤・背骨・胸椎・股関節・足関節・筋肉・筋膜・トリガーポイント・動作パターンなどを総合的に確認しています。
これは、
「痛い場所=原因」と決めつけるのではなく、
身体全体の運動連鎖を評価することで、現在どこに負担が集中しているのか、どこで代償が起きているのかを把握するためです。
連動性の確認のためにも、そこへと繋がった一連の流れを把握することが施術する上では大切になります。
可動性が不足している関節にはその動きを引き出すアプローチを、
安定性が不足している関節には支える働きを高めるアプローチを行い、
柔道整復師がその評価をもとに、お一人おひとりの状態に合わせて整体施術を行っています。
運動連鎖を整えることは、予防やパフォーマンス向上にもつながる
運動連鎖は、痛みが出てからのケアだけでなく、痛みを繰り返さない身体づくりにも重要な考え方です。
各関節が本来の役割を果たし、筋肉や筋膜が協調して働きやすくなる事で、身体全体へ負担が分散されやすくなります。
その結果、
日常生活での動作がスムーズになり、疲れにくい身体づくりやスポーツ時の効率的な動作にもつながります。

もちろん、運動連鎖を整えればすべての症状が予防できるというわけではありません。
しかし、
身体全体の動きを見直し、適切なコンディションを維持することは、
健康管理やスポーツパフォーマンスの維持・向上を考えるうえで大切な要素のひとつだといえます。
よくある質問
Q.整体を受ける際の、運動連鎖のチェックは、痛みがない人でも受ける意味がありますか?
A. あります。運動連鎖の乱れは、痛みとして自覚される前段階から徐々に進行していくことが多いため、痛みがない時期から関節の可動性・安定性のバランスを確認しておくことは、ケガの予防やパフォーマンス向上の観点から意味があると考えられます。
Q.ストレッチだけで運動連鎖は改善しますか?
A. 硬くなっている部位のストレッチは重要な要素のひとつですが、それだけでなく、安定性を担うべき関節が正しく機能するための筋肉の緊張をゆるめ、筋力・使い方、日常の姿勢・動作の癖の見直しも合わせて行うことで、より根本的な改善につながりやすくなります。
Q.スポーツをしていない人にも、運動連鎖の考え方は関係ありますか?
A. はい。歩く・立ち上がる・物を持ち上げるといった日常動作も、複数の関節が連動するキネティックチェーンの一種です。スポーツをしていない方であっても、運動連鎖のバランスは日々の身体の使いやすさや、疲れやすさ・痛みの出やすさに影響していると考えられます。
柔道整復師・整体師からひと言
「肩が痛い=肩」「腰が痛い=腰」という視点では、見落としてしまう身体のつながりがあります。
運動連鎖(キネティックチェーン)は、身体全体を一つのシステムとして捉える考え方です。
痛みのある局所的な施術をすることはとても大切ですが、
その症状に至った背景を捉え、姿勢や動作、関節の連動性まで評価することで、
より適切な施術やセルフケアにつなげることができると考えています。
痛みや不調が繰り返し起こる、あるいはパフォーマンスの伸び悩みを感じている場合は、
身体全体の運動連鎖の状態も一度、東広島鍼灸整骨院の整体施術で確認してみることをお勧めいたします。
東広島鍼灸整骨院の整体施術では、柔道整復師・整体師としての専門的な視点から、
お一人おひとりの運動連鎖の状態を丁寧に評価し、動きやすい・疲労が溜まりにくい身体づくりのサポートをいたします。
ご自身の身体の使い方や動きのクセが気になる方は、お気軽にご相談ください。



