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鍼の効果とは?身体への作用と仕組みを鍼灸師が解説
目次
鍼の効果とは?身体の中で何が起きているの?
「鍼って効果あるの?」
「鍼をすると体の中で何が起きているの?」
カウンセリングや施術中に、このような質問を頂くことがあります。
また、
実際鍼をされている方からも、
「鍼を受けた後は身体がスッキリした感じがするけれど、どうして?」
という疑問をいただくこともあります。
鍼治療は、数千年の歴史を持つ伝統的な施術ですが、
現代では神経科学・生理学・免疫学などの分野からも研究が進んでおり、
身体に生じる反応の仕組みが少しずつ明らかになってきています。
少しずつ解明されつつある鍼のエビデンス
「科学的根拠がない」とされていた時代と転換の流れ
明治時代に西洋医学が導入されて以降、漢方を含む日本の伝統医学は、
非正統医学として存続の危機に立たされました。
さらに終戦後GHQが、鍼灸の実践を禁止しようとしたため、
日本での鍼灸は再び存続の危機に陥り、
鍼灸は長らく否定的に見られていた時代が続いていました。
最初の転換点 1970年代 「エンドルフィン」の発見
1970年頃から、鍼に鎮痛作用があることが研究で発見され、
体性感覚の自律神経反射に関する研究が進み始めました。
また同時期に脳内のエンドルフィン(内因性鎮痛物質)が発見され、
「鍼を刺すとエンドルフィンが分泌される」という仕組みが初めて科学的に説明されるようになりました。
これが「鍼はプラシーボではない」という研究の出発点となっていきました。
その後、
- 1979年 → WHO公式認定(適応疾患43疾患)
- 1989年 → WHOが361経穴を国際標準化
- 2018年→ 漢方薬や鍼灸などの伝統医療をWHOが認定。国際疾病分類(ICD-11)に東洋医学が正式追加
このような流れで、鍼は徐々に現代の世の中に認められはじめております。
鍼はこれから科学的な進歩に伴い、エビデンスも今よりさらに解明されてくる事に期待を持ちつつ、
今回は、今すでに知られている鍼の効果・エビデンスを分かりやすく解説いたします。
WHO(世界保健機構)公認 鍼灸の適応症 症状一覧はコチラ。
鍼治療とはどんな施術?
鍼治療とは、
鍼刺激により身体が備えている「調整機能・修復過程が働きやすい環境を整えること」を目的とした施術です。
日常生活で、
- 長期間にわたる姿勢の乱れ
- 同じ動作の繰り返し
- 慢性的な疲労
- 精神的ストレス
などが続くと、
体の修復力では対応しきれなくなってきます。
その結果として、
- 筋肉の持続的な緊張・柔軟性の低下
- 関節可動域の制限
- 局所の血流低下
などにより慢性化しやすくなる傾向があります。
鍼治療の働きは、
このような身体への負荷が続き、「体の修復力や調整だけでは十分に対応しきれない状態に対して、
鍼施術で生体に適度な刺激を与えることで、
身体が本来持っている「自己調整力」・「修復過程」が働きやすい環境づくりを目的とした施術です。
私たちの身体には、外部から刺激を受けたときに、
それに適応しようとするさまざまな生理反応が備わっています。
鍼による微細な刺激も、
身体にとっての「適度な外部刺激」として認識され、
神経・血管・筋肉・免疫系などが相互に反応し、
全体のバランスを保とうとする働きが起こると考えられています。
この働きの土台にあるのが、
体温・血圧・血糖値・体液量などを一定の範囲に保とうとする「ホメオスタシス(恒常性)」という仕組みです。
筋肉や関節も例外ではなく、
過度な負担や緊張が加わることで、それを元の状態へ戻そうとする調整反応が自然と働きます。
鍼刺激は、いわばこのホメオスタシスのスイッチを適度に刺激することで、
神経・血管・筋肉・免疫系がそれぞれの持ち場でバランス回復に向けて働きやすい状態をつくる、
と捉えることができます。
体の「修復過程」とは?
私たちの体の組織は、
日々新陳代謝(組織の修復サイクル)を繰り返す事により生命活動を維持することが出来ます。
新陳代謝が滞りなく行われることで、
筋肉や腱、靱帯、骨、内臓、脳、皮膚、免疫細胞などのあらゆる組織の機能が維持されています。
微細な鍼の刺激は、体の修復サイクルのきっかけとなる刺激として生体に作用し、
- 血流促進
- 細胞間の情報伝達物質の放出
- 免疫細胞の活性化
など、
組織の維持・修復に関わるさまざまな生理反応を引き起こすことが報告されています。
つまり、鍼治療とは、
わかりやすく表現すると、
「身体が自分で回復しようとする力をサポートする施術」と捉える事ができます。
鍼刺激が身体に与える主な生理的反応
鍼の刺激は皮膚の表面だけでなく、
その下にある神経・血管・筋膜・筋肉などにも届き、さまざまな反応を引き起こします。
現在わかっている主な反応を順に説明します。
1.血流の促進
鍼刺激が身体に与える影響のなかで、特に重要なのが「血流の促進」です。
鍼による刺激で血流が促されるルートは、
実は、一つのルートだけではありません。
- 1.刺入された筋肉への直接作用
- 2.毛細血管レベルの微小循環への影響
- 3.神経末端から血管拡張物質が放出される軸索反射
- 4.脳からのフィードバックによる全身的な調整
この4つのルートによる多角的な働きかけで血流促進に働きかけます。
筋肉が緊張して血流が滞ると、
酸素・栄養の供給が滞り、疲労物質や発痛物質が局所に溜まりやすくなります。
これが慢性的なこりや痛みの一因です。
鍼は、このような状態に対して、
4つのルートから働きかけ、血流が改善されやすい環境を整えていきます。
鍼の血流促進の働きかけは、
刺鍼部位が赤くなったり、じんわりと温かく感じたりする反応として現れます。
4つのルートから血流を促す仕組みについて、
詳しい解説は以下の関連記事をご覧ください。
2.神経反射(脊髄・脳幹を介した全身的な反応)
鍼刺激は、局所に起こる反応(血行促進)と同時に、神経を通じて脊髄・脳へも伝わります。
脳はその情報をもとに、筋肉・血管・自律神経に対し調整の指令を送ります。
この流れを「神経反射」といいます。
体性-内臓反射・内臓-体性反射
「神経反射」の代表的なものが、
内臓・皮膚・筋肉が互いに影響し合う
✅「体性–内臓反射」
✅「内臓–体性反射」
です。
たとえば、
内臓の不調が特定の皮膚や筋肉の硬さや張りとして現れたり(内臓-体性反射)、
逆に特定のツボへの刺激が、内臓の働きに影響を与えたり(体性-内臓反射)します。
この体性内臓反射は、次の経路で行われるとされています。
- 皮膚・筋肉の感覚受容器が刺激⇒
- 体性求心性線維(Aδ線維・C線維)を通じて情報が伝わる⇒
- その情報が脊髄後角へ入力される⇒
- 脊髄内の反射弓を介して、交感神経・副交感神経に情報が伝わる⇒
- 心臓・胃腸・血管といった内臓に反応が起こる
つまり、「体性刺激 → 自律神経 → 内臓反応」という流れです。

この経路を通じて、
鍼刺激は交感神経・副交感神経の活動を調整し、
- 心拍数の変化
- 血圧の調整
- 末梢血管の拡張
- 胃腸の蠕動運動の変化
といった反応が起こることが報告されています。
特に胃腸の運動については、
迷走神経系を介して蠕動運動や排便反射が調整されることが知られています。
また、
鍼刺激により脊髄後角での痛覚伝達が調整されることで、
内臓由来の痛みの軽減や、内臓に関連する筋肉の緊張緩和が起こることも報告されています。
脳幹を経由する経路
鍼刺激の情報は、脊髄だけでなくさらに上行し、以下の脳幹にも入力されます。
- 延髄:孤束核(NTS)
- 延髄:迷走神経背側運動核(DMV)
- 延髄腹外側部(RVLM)
- 中脳:中心灰白質(PAG)
これらは自律神経の中枢としての役割を担っており、
鍼刺激による内臓反応の調整に関わっていると考えられています。
つまり、
「鍼刺激 → 脊髄 → 脳幹 → 自律神経 → 内臓反応」という、
脊髄の経路と、脊髄から脳幹まで及ぶ経路も存在するとされています。
筋緊張への反射的な作用
筋肉の過緊張に対しては、
鍼施術により脊髄レベルでの筋緊張抑制の反射(Ib抑制など)が働き、
鍼刺激後に筋肉がふっとゆるむような感覚が得られることがあります。
鍼の神経反射で期待される変化
神経反射の結果として、以下のような変化が期待されます。
- 筋肉の過緊張の緩和
- 自律神経バランスの調整(交感神経の過緊張の緩和)
- 内因性オピオイド(エンドルフィン・エンケファリンなど)の分泌促進
- 痛みの伝達を抑制するゲートコントロール機構への影響
3.筋膜・結合組織への影響
近年、鍼の作用メカニズムとして注目されているのが「筋膜(ファシア)」への影響です。
筋膜とは、
筋肉・臓器・血管・神経などを包み、全身に連続して張り巡らされている結合組織の総称です。
慢性的な緊張・姿勢不良・炎症が続くと、
筋膜は癒着(ゆちゃく)・硬化しやすくなり、痛みや可動域制限の一因となることがわかってきています。
鍼の刺入によって筋膜組織に物理的な刺激が加わることで、
線維芽細胞(筋膜を構成する細胞)が活性化し、
筋膜の再構築に関与する可能性が研究で示唆されています。
肩こりや腰痛の原因となりやすい「トリガーポイント」に鍼を刺入すると、
その部分の筋線維が瞬間的にピクッと収縮する「局所単収縮反応(local twitch response)」が起こることがあります。
これにより、過緊張状態にあった筋線維の緊張が緩和され、血流も改善しやすくなります。
4.中枢神経系・神経伝達物質への作用
近年の研究では、鍼刺激が脳の中枢神経系にまで働きかけ、
痛みの伝達や気分にも影響を与えている可能性があることが示唆されています。
鍼刺激の情報が、脊髄を通って脳の視床下部・下垂体へと伝わり、
「下行性疼痛抑制系」という仕組みが働き、
脳幹の縫線核(ほうせんかく)という部位からセロトニンやノルアドレナリンが分泌され、
痛みの伝達そのものを遮断すると報告されております。
さらに、鍼灸刺激により大脳辺縁系の側坐核でもセロトニン放出が促進されると報告されております。
これが施術後の「スッキリ感」「気分が落ち着く感じ」につながっている可能性があります。
また、鍼灸は自律神経系にも働きかけ、
交感神経と副交感神経のバランスを整えたり、
ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を調整したりする作用も報告されています。
補足として、
④の中枢神経系を介する機序については、
動物実験や一部の臨床研究で示唆されている段階のものが報告されており、
今の段階ではメカニズムのすべてが解明されているわけではありません。
まとめ:鍼治療は「身体の自己回復力を引き出す」施術
鍼治療の効果は、
・血流促進
・筋肉の過緊張の緩和
・自律神経バランスの調整(交感神経の過緊張の緩和)
・内因性オピオイド(エンドルフィン・エンケファリンなど)の分泌促進
・痛みの伝達を抑制するゲートコントロール機構への影響
・筋膜・結合組織へのアプローチ
など複数の働きかけがある事が分かっております。
大切なポイントとして、
鍼治療とは、体にないものを「外から加える」施術ではなく、
自身の体が本来持っている調整力・修復力が働きやすい状態へ導くことを目的としている施術です。
症状の出方・身体の状態・生活習慣によって、
鍼刺激に対する反応の出方は一人ひとり異なります。
東広島鍼灸整骨院では、一人ひとりの状態を丁寧に評価したうえで、
最適な施術部位・刺激量・施術頻度を考慮し施術しております。
東広島鍼灸整骨院の鍼治療について気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。



