ケガの応急処置はRICEからPOLICEへ
スポーツや日常生活でのケガ、特に捻挫や打撲の応急処置といえば
「RICE(ライス)」が常識でした。
RICE(ライス)とは?
「RICE(ライス)」とは、急性期(受傷直後〜48〜72時間の間)における
捻挫・打撲・軽度の筋・腱損傷に対する基本的な応急処置として施されてきました。
RICEの目的は、
主に組織内出血や腫脹の拡大や炎症を抑え、
痛みのコントロールと二次的合併症の予防を目的として行われております。
1978年から長年使われてきたRICEは、一定の効果もあったとされております。
ちなみに「RICE(ライス)」とは、以下の4つの頭文字です。
RICE処置(捻挫・打撲・肉離れなどの応急処置)
要素 | 内容 |
---|---|
Rest(安静) | 損傷部位への負荷を避けるため、患部を動かさず完全に休ませる。 |
Ice(冷却) | 患部の血管を収縮させ、出血や腫脹(浮腫)の拡大を抑え、痛みを和らげる。 |
Compression(圧迫) | 弾性包帯などで圧迫し、出血・浮腫を抑制し、関節の不安定性を一時的に補助する。 |
Elevation(挙上) | 患部を心臓より高く上げ、静脈還流を促し、浮腫の軽減を図る。 |
POLICEの普及
RICEの提唱者であるDr. Mirkin自身が「RICEは時代遅れ」と発言したことで、
世界的にPOLICEへの移行が加速したとされております。
このDr. MirkinRICEの提唱者でありながら、後にその限界を認めてアップデートを促したという点で、
スポーツ医学の進化に大きく貢献した人物と言えます。
2017年の国際スポーツ理学療法学会では、
Optimal Loading(最適な負荷)が主要テーマとなりました。
2018年頃に国際的標準となり、2020年頃、日本で本格普及しております。
日本では、まだRICEが主流の場面もありますし、
状況に応じて取り入れることも必要であります(後述で解説)。
スポーツ現場や理学療法・整形外科領域では、
徐々にPOLICEの考え方が浸透しつつあり、早期回復・再発予防の観点からPOLICEが注目されています。
鍼灸師・整体師・柔道整復師の立場として、
多くの方の施術をさせていただいた経験から、
適切な応急処置がその後の回復に大きく影響することを日々実感しております。
今回はPOLICEの詳細と、なぜRICEからPOLICEに変わったのか解説いたします。
特にスポーツ場面ではよく起こしやすいケガ(捻挫・打撲・肉離れなど)ですが、
そんなケガが起こった際の応急処置の知識を正しく知ることで、
✅その後のケガの修復度合い、
✅復帰の速度の向上、
✅ケガの再発予防
に繋がりますので、スポーツをされる方はもちろん、されない方も、
頭の片隅にとどめておいていただけますと幸いです。
RICEとPOLICEの違い比較表
項目 | RICE | POLICE |
---|---|---|
R / P | Rest(安静) | Protect(保護) サポーターやテーピングで患部を守る |
O | ― | Optimal Loading(最適な負荷) 痛みの無い範囲で少しずつ動かす |
I | Ice(冷却) 1回15〜20分を目安に冷やす |
Ice(冷却) 必要に応じて適度に行う |
C | Compression(圧迫) | Compression(圧迫) 循環を妨げない程度に行う |
E | Elevation(挙上) | Elevation(挙上) 腫れの軽減をサポート |
RICEからPOLICEに変更された大きなポイント
上の表から明らかにわかることは、
冷却や圧迫も内容が少し変更されておりますが、
安静から「保護と適切な負荷」に変更されているという点が注目する点です。
そして、一番の変更ポイントは「適切な負荷」です。
Q.どうしてPOLICEに変更されたの?
捻挫・打撲・肉離れを起こした筋肉は損傷しております。
その傷めた筋繊維の損傷を最小限に抑えるために安静もある程度の必要です。
そのため、RICE処置では「安静」が大切だとされてきました。
しかしRICE処置も大切ではありますが、
最新の考え方では必要以上の安静が回復を遅らせるとされてきており、
受傷初期はRICEを重視しますが、
ケガの状態をみながら、ある程度腫れや熱感が引いてきたら、
早めに「安静」から、「最適な負荷(Optimal Loading)」へ移行したほうが良いとする概念が推奨されるようになっております。
Q.安静のしすぎによって起こりやすい体へのリスクとは?
- 筋力の急速な低下
- 筋萎縮や癒着
- 関節の拘縮(固まってしまうこと)
- 血流の悪化
- 組織修復の遅延
- 機能回復期間の延長
などの体へのリスクから、回復を遅らせたり、修復を悪化させることが懸念されるため、ある程度の目安を機に、早めに適度な負荷を取り入れる事が推奨されております。
Q)なぜ適切な負荷を取り入れたほうがいいの?
A)適切な負荷「Optimal Loading」は、損傷後の早期回復を促す
適度な負荷を取り入れることで、血流・組織修復・神経修復を促進し、
コラーゲン繊維の配列を整え、筋癒着や可動域制限を防ぐ働きがある、
とされます。
RICEからPOLICEへの流れ(時系列)
受傷直後(0〜48時間)
- RICEが基本(安静・冷却・圧迫・挙上)⇒腫れ・出血・痛みのコントロールが目的
- 冷却は1回15〜20分を目安に休憩を挟んで行う
- 骨折が疑われる場合は一度、医療機関で検査
48時間以降〜修復期
- POLICEへ移行
- Rest(完全安静)からOptimal Loading(最適な負荷)へ概念が変更されたことで⇒腫れ・熱感が落ち着いたら軽い運動や負荷を開始することが推奨
- 血流を促す温熱療法や鍼灸を修復サポートに取り入れる
回復期(数日〜数週間)
- 荷重や可動域訓練を徐々に増やす
- 筋力・バランス・柔軟性を回復
- 鍼灸や温熱、マッサージなどで回復を促す
RICEを行うべきなのはどのようなケース?
RICEが重視されるケース
1. 出血や腫れが強い急性外傷(受傷直後~約48時間以内)
-
捻挫・打撲・肉離れなどで 出血や腫脹(腫れ)が強く出ている場合
-
血管損傷を伴う可能性が高いケースでは、まず「安静」と「冷却」で出血・腫れを抑えることが最優先
→ POLICEの「Optimal Loading(適切な運動負荷)」を早く行うと、腫れや内出血を悪化させる危険があります。
2. 強い痛みがある場合
-
痛みが強く、少し動かすだけで増悪するようなケースでは、無理に動かさずRICEを優先。
-
特にRest(安静)とIce(冷却)で「痛みの軽減」を図ることが重要です。
3. 高度損傷が疑われる場合
-
靱帯断裂、骨折、重度の肉離れ などが疑われるとき
⇒この場合は早期に運動負荷をかけると状態を悪化させるため、
POLICEよりもRICEで患部を守ることが必要です。
(例:足首をひどくひねった → 歩くとグラつく → 靭帯損傷の可能性 → まずは固定+RICE)
4. 高齢者・基礎疾患ありの場合
-
循環不全や骨粗しょう症などを抱える方は、炎症・腫れが大きいと二次障害(関節拘縮・骨萎縮)が進みやすい傾向があり、組織修復が遅れるリスク が高いことが懸念される。
⇒まず炎症や腫れをしっかりコントロールするために、RICEをしっかり目に行うケースが多い。
-
特に「Rest(安静)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」をしっかり行うことが多い
-
ただし「Ice(冷却)」は 過剰に長時間行わない ことが大切です。
このようにRICE処置も受傷の初期段階では状況に応じて必要で、
「急性期」のケガの度合いがひどい時では、安静を取り入れたほうが良いです。
炎症が落ち着き、腫れや痛みが軽減してきたら → POLICEに移行します
RICEが向かないケース
慢性的な痛み・損傷
-
慢性的な腰痛・肩こり・腱鞘炎・疲労骨折・変形性関節症など、急性期ではない症状
→ この場合は温熱やストレッチ、鍼灸など、血流を促すアプローチを行う
血流障害を伴う方
-
糖尿病や末梢循環障害を持つ方に Ice(冷却)を長時間行うと血流がさらに悪化 するリスクが考えられます。
⇒状況に応じて、冷却は最小限にとどめるか、避けた方が良いケースもあります
神経損傷を伴う場合
-
強い痺れや麻痺があるとき、冷却で感覚がさらに鈍くなり、神経回復を遅らせる可能性もありますので、状況に応じて判断が必要です。
微細損傷や軽度のケガ
-
ごく軽い捻挫や打撲などは、過度な安静・冷却よりも「早期の適度な運動」 が回復を早めるとされ、不必要にRICEを長く行うと、回復を悪くさせることが懸念されます
Q.適切な負荷Optimal Loadingの程度が分からない
適切な負荷とは、「痛みの範囲内(自制内)」で行うことが推奨されるケースが多いです。
ただし、これは痛みが「我慢できる範囲」であり、悪化しない負荷であることが前提です。
痛みの範囲内で行う適切な負荷にはリスクも伴いますので、
適切な負荷を心掛けていたつもりが、かえって傷めたり、再受傷でまた一から振り出しに戻ってしまった、そればかりか初めよりも悪化してしまったというケースもみられます。
適切な負荷のつもりがかえってひどくなるケースも
東広島鍼灸整骨院でも、ケガの後の負荷の掛けすぎによって、かえって悪化して施術にお越しになられる方もいらっしゃいます。
あくまでも適切な負荷は大切とされますが、負荷の掛け加減が難しいところです。
ここの段階で、再受傷や修復の遅延、さらには悪化に繋がってしまわないためにも、負荷は慎重に行う事をお勧めいたします。
あせらず無理をされずに行ってください。
適切な負荷は「自制内 vs 自制外」の痛みなのかで判断する
- 自制内の負荷:軽度の違和感や張り⇒〇
- 自制外の負荷:ズキズキ・鋭痛など⇒×
適切な負荷Optimal Loadingは、自制外の痛みがある場合は避けるべきです。
ですので、
自制内の痛みの範囲で慎重に負荷をかけるのが理想的です。
例)
- 「少し張るけど気持ちいい」→ OK
- 「ズキッと痛む」「動かしたくない」→ NG
- 「動かした後に痛みが残る」→ 負荷が強すぎた可能性あり
痛みの範囲内と痛みの無い範囲内の違い表
表現 | 意味 | 臨床での使われ方 | リスク・メリット |
---|---|---|---|
痛みの範囲内 | 痛みはあるが、我慢できる程度。悪化しない範囲で動かす | 可動域訓練やストレッチで「少し痛いけど動かせる」状態。回復期・慢性期 | ✅ 回復促進の可能性あり ⚠️ 無理すると炎症悪化のリスク |
痛みの出ない範囲内 | 全く痛みを感じない範囲で動かす | 急性期や過敏な状態下で
適応。「安全第一」の運動指導 |
✅ 安全性が高い ⚠️ 回復が遅れる可能性もある |
Q.適切な負荷Optimal Loadingはどのような負荷?
- 軽い可動域運動
- 部分的な体重負荷
- 日常動作の維持
- 段階的な活動レベルの向上
といったように、徐々に負荷を加えていくことが大切です。
Q)適切な負荷を始める目安は?
A.適切な負荷をかけ始めてもいいとされる目安は、
- 安静時痛の軽減
- 腫脹の改善傾向
- 関節の安定性確認
が認められた場合、徐々に負荷をかけていきます。
重度捻挫の場合の急性期(0-72時間)処置
例えば、
重度の捻挫の場合の応急処置では、
初期は安静重視することも必要で、Protection(保護)を行い、
負荷は、
- 荷重禁止
- 関節可動域運動も制限
- 痛みのない範囲での最小限の動きのみ
亜急性期(3日-2週間)は、段階的に負荷導入をしていくことが大切で、
無理のない範囲で段階的に負荷を導入といった具合に、
POLICEの「Optimal Loading」をそのまま取り入れるというよりも、
慎重に適用する必要があります。
このように、
どのようなケガ(捻挫・打撲・肉離れなどの)に対してでも早期負荷をかけるというわけではなく、
ケガのレベルや組織修復の段階に応じた負荷調整を行い、
そのケガの度合いに応じたアプローチが大切です。
捻挫・打撲でも腫れや痛みが強い時は
「POLICEに移行」ではなく「RICEを延長」するケースもあるということもあるということも、頭の片隅に留めておいてください。
RICEからPOLICEへの正しい解釈の結論
つまり、
「RICEからPOLICEに完全に置き換わった」
わけではなく、
“時期やケガの度合いによる使い分け”
が正しい解釈であると考えます。
ケガ(捻挫・打撲・肉離れ)後のアプローチは東広島鍼灸整骨院の鍼灸・整体にお任せください
このように、過度な安静や冷却のしすぎは血流を妨げ、かえって回復を遅らせることもあります。
私たち鍼灸師・柔道整復師は、ケガの後に起こりがちな、
✅筋萎縮や癒着
✅関節の拘縮(固まってしまうこと)
✅血流の悪化に対して
鍼灸や整体の施術により予防するようサポートいたします。
捻挫・打撲・肉離れなどのケガ後にRICEやPOLICEなどで処置をきちんと施されていても、
ケガで受けたダメージに対して修復が追い付いていないと、
痛みなどの症状に繋がったり、修復がなかなか思うように進まなかったりという事もあります。
✅セルフケアが不十分
✅深部を痛めてる
✅ケガの状態がひどかった場合
✅修復が追い付いていない場合
などは、
RICEやPOLICEの後のアフターケアが大切です。
特にアプローチが難しい深層部への修復を促すために、
鍼灸治療では深層部までの修復を促すことが可能ですのでおススメです。
鍼灸治療のメリット
メリット | 内容 |
---|---|
疼痛緩和効果 | 鍼の刺激で内因性オピオイドやセロトニンが分泌され、痛みが和らぎます。打撲や肉離れなどの強い痛みに即効性を感じるケースも多いです。 |
血流改善による回復促進 | 鍼やお灸の刺激で血流が促進され、酸素や栄養供給が高まります。老廃物や発痛物質の排出も促され、損傷組織の修復スピードをサポートします。 |
炎症のコントロール | 鍼の消炎作用で過剰な炎症を抑制しつつ、必要な治癒反応を妨げずに促進します。 |
筋緊張の緩和 | 周囲の過緊張した筋肉をリラックスさせ、血流改善を促進。患部の修復を助け、代償的に起こる腰痛や肩こりなど二次的な痛みの予防にもつながります。 |
神経の調整 | 自律神経に働きかけて交感神経の過緊張を和らげ、血流促進や筋緊張の低下に寄与します。免疫機能の調整にもつながります。 |
瘢痕化・癒着の予防 | 修復期に鍼で微細な刺激を与えることで、コラーゲン繊維の乱れや筋繊維同士の癒着を防ぎ、しなやかな組織修復をサポートします。 |
整体を活用するメリット
メリット | 内容 |
---|---|
関節の可動域改善 | 捻挫や肉離れ後に硬くなった関節・筋肉を調整し、スムーズな動きを取り戻せるようサポートします。 |
筋バランスの調整 | ケガの回復過程で起こりやすい「かばい動作」を修正し、アンバランスな筋肉の使い方を整えます。 |
二次障害の予防 | 捻挫後に多い「足首の不安定性」や「反対側の膝・腰の痛み」といった二次障害を予防する効果が期待できます。 |
姿勢・動作の改善 | ケガの原因となった身体のクセ(着地の仕方・歩き方・姿勢)を見直し、根本原因にアプローチすることで再発防止につながります。 |
体液循環の促進 | 整体の手技で血流・リンパの流れを改善し、炎症の治まりや老廃物の排出を助けます。 |
東広島鍼灸整骨院のオーダーメイド対応施術
東広島鍼灸整骨院では、一人ひとりの症状や競技特性に合わせたオーダー施術が出来ます。
また、スポーツ選手のパフォーマンスを高め、
ケガの直後の適切な処置から、回復段階における修復促進、再発予防までをトータルでサポートいたします。
ケガにおける炎症反応は、身体に備わった自然な修復プロセスであり、
それを妨げずに、状況に応じた必要なサポートを加えることが大切です。
東広島鍼灸整骨院では、鍼灸師・柔道整復師が患部の状態を的確に見極め、
ケガ後の筋肉の癒着を予防し、自然治癒力を引き出す施術によって、
早期回復を全力サポートしております。
ケガは急性期の処置だけでなく、修復期・回復期におけるケアが大切です。
特に、ケガでも捻挫や肉離れ、打撲の度合いがひどかった方や、
ケガをした時に放置して必要なケアを特にせず、自然に痛みが引くのを待ったという方などでは、
しばらくしてから、筋肉や関節に違和感が残ったり、可動域が以前よりも狭まってしまった、
という声を聞くことがよくあります。
鍼灸や整体療法の施術を活用することは、
血流改善・筋緊張の緩和・筋委縮の予防につながります。
捻挫・打撲・肉離れなどのケガ後の
✅修復促進をしたい
✅パフォーマンスを高めたい
✅痛みが引かない
✅違和感がある
などでのご相談は東広島鍼灸整骨院までお気軽にご相談ください。