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鍼治療はなぜ血流を促すの?4つの仕組みを鍼灸師がわかりやすく解説
鍼治療を受けると、
「施術した部分がじんわり温かくなった」
「体全体がポカポカしてくる」
といった感覚を経験される方が多いと思います。
これは「気のせい」、「リラックスしただけ」でもなく、
鍼の刺激によって実際に身体の中で血流に関わる生理的な反応が起きているためです。
今回は鍼治療によって、
「どのように血流が促進されるのか?」を具体的に、
血流を促進させる4つの異なるルートからの働きかけを、
鍼灸師・整体師が順番にわかりやすく解説いたします。
その1:「局所」で何が起きているの?
鍼が皮膚から筋肉に刺さると、最初に反応するのは刺入された場所そのものです。
たとえば、肩こりで硬くなった筋肉に鍼を刺すとします。
硬くなった筋肉の中では、
筋肉が緊張して収縮したまま緩まない状態が続いているため、
筋肉内の細い血管が圧迫されて、血液が流れにくくなっています。

血流が不足すると、筋肉に届く酸素と栄養が減ります。
同時に、
動いた筋肉が出す老廃物(乳酸など)や、痛みを引き起こす発痛物質(ブラジキニン・プロスタグランジンなど)がその場に溜まりやすくなります。
これが、
「コリが痛い」「放置するほど重だるくなる」という状態の正体です。
鍼の刺入により筋肉に直接的な刺激を受けると、
過剰に収縮していた筋肉が緩みはじめます。
筋肉が緩むと、圧迫されていた血管が開放されて血液が流れ込みやすくなります。
この、鍼が刺さった場所そのものへの直接的な血流改善が
まず最初に起きる「局所への影響」です。
その2:毛細血管・微小循環への影響
局所の血管が開いた後、次に関係してくるのが毛細血管レベルの循環です。

毛細血管とはどのくらい細いかというと、
直径がわずか5〜10マイクロメートル(0.005〜0.01mm)ほどで、
赤血球が一列に並んでやっと通れるくらいの細さです。
この毛細血管は全身に張り巡らされており、
その総延長は約10万kmとも言われています(地球2周半以上です)。
毛細血管レベルで行われる血液のやり取りを「微小循環」と呼びます。
細胞が生きていくために必要な酸素と栄養素は、
最終的にはこの微小循環を通して届けられています。
逆に、細胞が代謝によって出した二酸化炭素や老廃物も、
毛細血管を通じて回収されています。
つまり、どんなに心臓が元気でも、この末端の微小循環が滞れば
細胞は必要なものを受け取れなくなるわけです。
慢性的な筋肉の緊張・冷え・姿勢の乱れが続くと、
この毛細血管レベルの流れが停滞しやすくなります。
鍼の刺激はこの微小循環にも影響を与えることが研究で報告されており、
細胞レベルでの代謝・酸素供給が改善されやすい環境づくりに関わると考えられています。
「鍼を受けると手足の先まで温かくなった」という感想を聞くことがよくありますが、
これはまさに、
この末梢の微小循環が促された結果と考えられます。
その3:軸索反射による血管拡張
ここからが少し専門的な話になりますが、できるだけわかりやすく説明します。
鍼が皮膚や筋肉に刺さると、その部位にある「感覚神経」が刺激を受けます。
通常、神経というのは「刺激を受けたら、その信号を脳へ送る」という
一方通行のはたらきをするイメージがあると思います。
ところが、感覚神経の末端にはもう一つの機能があります。
刺激を受けた神経の末端が、
脳へ信号を送る方向とは逆向きに、
自分の枝先(軸索の末端)から直接、
化学物質を放出するという反応です。

この時放出される化学物質が、
「サブスタンスP」や「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」と呼ばれるものです。
これらの物質には「周辺の血管を拡張させる作用」があります。
つまり、脳を経由せずに、神経の末端が直接「周りの血管を広げて」という指示を出すわけです。
これを「軸索反射」といいます。
鍼をした周囲の皮膚が赤くなることがありますが、
あれはまさにこの軸索反射によって周辺の血管が拡張した結果です。
ポイントは、これが脳を介さないスピーディーな反応であることです。
鍼が刺さった瞬間から、局所では神経末端が自律的に血管拡張の指令を出しています。
その4:脳からのフィードバックによる全身的な血流調整
軸索反射が「脳を介さない局所の反応」だとすると、
こちらは逆に「脳を通じた全身への反応」です。
鍼の刺激情報は感覚神経を通って脊髄へ上がり、
そこから脳(視床・大脳皮質・視床下部など)へ伝達されます。
脳はこの情報を受け取ると、いくつかの重要な指令を全身へ送ります。
一つ目が自律神経への調整指令です。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。
ストレスや緊張が続いている状態では交感神経が優位になり、
血管は収縮して血流が制限された状態になりやすいです。
鍼の刺激が脳へ伝わることで、副交感神経が優位になりやすい方向へシフトし、
血管が弛緩して血流が改善されやすい状態へ向かうことが知られています。
二つ目が内因性オピオイドの分泌です。
脳は鍼の刺激に反応して、エンドルフィン・エンケファリンといった
体内で作られる鎮痛物質(内因性オピオイド)を分泌します。
これらの物質は痛みを和らげるだけでなく、
血管の緊張を緩める作用にも関与していると考えられています。
鍼を受けた後に「体が温かくなる」「全身がゆるんだ感じがする」「眠くなる」という感覚は、
この脳からのフィードバックによる全身的な反応が起きているサインでもあります。
鍼による血流促進4つのルート まとめ
鍼による血流促進は、以下の4つのルートが同時に、
あるいは時間差で連鎖するように起きています。
- 局所への直接作用
鍼刺激で筋肉の緊張が緩み、圧迫されていた血管が開放されて血流が促される
- 微小循環の改善
毛細血管レベルでの循環が促され、細胞への酸素・栄養の供給と老廃物の回収が促進される
- 軸索反射による血管拡張
脳を介さず、神経末端が直接周辺の血管を拡張させる化学物質を放出する
- 脳からのフィードバック
鍼の刺激情報が脳に届くことで自律神経が調整される。また、内因性オピオイドが分泌される。
これらにより全身的な血管弛緩・血流改善へつながる
これだけ多角的に血流の促進に働きかけるからこそ、
鍼治療は「刺した場所だけでなく、全体的に体が楽になった」と感じる方が多いという事が考えます。
血流の改善は、ただ「血流が流れやすくなる」というだけではなく、
細胞への栄養補給・老廃物の排出・筋肉の緊張緩和・自律神経の調整・痛みの軽減
これら全てに連動しています。
鍼治療後に「じんわり温かくなる」「体が軽くなった気がする」という感覚は、
身体の中でこれだけの反応が連鎖して起きた結果です。
鍼施術を受ける前に「鍼がどう作用しているのか」その仕組みを知っておくと、
治療に対する安心感も高まりやすくなり、体もより素直に反応しやすくなります。
気になることがあれば、どうぞ気軽にお声がけください。



